【新事業進出補助金】第3回から第4回への変更点まとめ|賃上げ要件と新特例に注目

中小企業新事業進出促進補助金(新事業進出補助金)の公募要領が、第3回から第4回へと改訂されました。本記事では、申請を検討している事業者の方や支援に携わる方に向けて、第3回(令和7年12月版)と第4回(令和8年3月版)を突き合わせて確認した変更点を整理します。

結論から言うと、賃上げ要件の考え方が大きく見直され、さらに「地域別最低賃金引上げ特例」という新しい仕組みが加わりました。 賃上げの水準と最低賃金の取り扱いは、補助率・補助上限・採点のすべてに関わる重要なポイントですので、第3回の感覚のまま準備を進めると思わぬ食い違いが生じます。順に見ていきましょう。

なお、補助金額(従業員数に応じて750万円〜最大7,000万円、賃上げ特例適用時は最大9,000万円)、補助対象経費の区分、補助事業実施期間(交付決定日から14か月以内)といった基本的な枠組みは、第3回・第4回で変わっていません。


目次

1. 公募スケジュールの確認

始めに第4回の公募スケジュールを確認しておきましょう。

項目第4回
公募開始令和8年3月27日(金)
申請受付開始令和8年5月19日(火)
応募締切令和8年6月19日(金)18:00
採択発表(予定)令和8年9月頃


2. 賃上げ要件(基本要件)の見直し

今回の改訂で最も実務に影響する変更が、基本要件のひとつである「賃上げ要件」の作り直しです。

第3回までの賃上げ要件

第3回では、賃上げ要件は次の2つの選択肢から「いずれか」を満たす形でした。

  • (1)一人当たり給与支給総額の年平均成長率を、事業実施都道府県の最低賃金の直近5年間の年平均成長率(=「一人当たり給与支給総額基準値」、都道府県ごとに異なる)以上で増加させる
  • (2)給与支給総額の年平均成長率を2.5%(=「給与支給総額基準値」)以上で増加させる

つまり、都道府県別の最低賃金成長率という変動する基準と、一律2.5%という固定基準のどちらかを選べる仕組みでした。

第4回の賃上げ要件

第4回では、この2択方式が廃止され、一本化・固定値化されました。

要件: 補助事業終了後3〜5年の事業計画期間において、一人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加させること

ポイントは次の3点です。

  • 都道府県別の最低賃金成長率を参照する仕組みがなくなり、**全国一律「3.5%」**という分かりやすい基準に統一されました。
  • 評価指標が「一人当たり給与支給総額」に統一され、第3回にあった「給与支給総額」ベースの目標値(給与支給総額目標値)という概念は廃止されました。設定する目標値は「一人当たり給与支給総額目標値」の1つだけになります。
  • これに伴い、補助金返還の計算式もシンプルになりました。第3回では2つの目標値それぞれに返還の計算対象判定がありましたが、第4回は「一人当たり給与支給総額目標値」の未達成率を補助金交付額に乗じる、という1本の式に整理されています。

第3回の感覚では「給与支給総額2.5%でクリアできる」と考えていた事業者にとっては、実質的に基準が引き上げられた形になります。事業計画上の人件費計画は、第4回基準で組み直す必要があります。


3. 【新設】地域別最低賃金引上げ特例

第4回で新たに加わったのが、「地域別最低賃金引上げ特例」です。これは近年の地域別最低賃金の大幅な引き上げを踏まえ、その影響を受ける事業者を支援するための仕組みで、補助率の引き上げ加点の2つの形で用意されています。

補助率の引き上げ

第3回では補助率は一律「1/2」でした。第4回では、特例の対象となる事業者は補助率が 「2/3」 に引き上げられます。

項目第3回第4回
補助率1/21/2(特例適用時は2/3)

特例の適用要件

特例(補助率引き上げ)を受けるための要件は次のとおりです。

2024年10月から2025年9月までの間で、補助事業の主たる実施場所で雇用している従業員のうち、「その期間の地域別最低賃金以上〜2025年度改定後の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が30%以上である月が3か月以上あること。

つまり、最低賃金の引き上げによって人件費負担が直接的に増えた事業者を対象とする、という考え方です。なお、この特例を適用する場合は、基本要件から「事業場内最賃水準要件」が除外される取り扱いになっています。

加点としての地域別最低賃金引上げ

補助率引き上げの対象にならない場合でも、同様の状況にある事業者は加点項目として申請できます。ただし、加点のみを申請して適用される場合は「事業場内最賃水準要件」は除外されない点に注意が必要です。


4. 賃上げ特例要件(大規模賃上げ)の数値調整

補助上限額を引き上げる「賃上げ特例要件」も、第3回の賃上げ要件見直しに連動して数値が調整されています。

賃上げ特例の追加要件の1つ目について、第3回は「給与支給総額基準値に加えて+3.5%(合計+6.0%)」でしたが、第4回は「一人当たり給与支給総額基準値に加えて+2.5%(合計+6.0%)」となりました。

合計の到達点である「年平均成長率+6.0%」は変わっていません。基本の賃上げ要件が3.5%に引き上げられたため、上乗せ分が3.5%から2.5%に調整され、合計値が維持されている、という整理です。事業場内最低賃金の上乗せ要件(+20円、合計+50円以上)は第3回・第4回とも同じです。


5. 加点項目の追加

加点項目には、最低賃金引き上げに関連する2項目が新たに加わりました。

加点項目第3回第4回
⑩ 地域別最低賃金引上げに係る加点なし新設
⑪ 事業場内最低賃金引上げに係る加点なし新設

⑪は「2025年7月と応募申請直近月の事業場内最低賃金を比較し、全国目安で示された額(63円以上)の賃上げをした事業者」が対象です。

なお、第3回にあった加点項目のうち「成長加速化マッチングサービス加点」は、第4回では「成長加速マッチングサービス加点」と名称が修正されています(サービス名の表記統一)。


6. 添付書類の追加

賃上げ関連の特例・加点が増えたことに伴い、提出書類も追加されました。第4回では、以下の事業者向けに新たな添付書類が定められています。

  • 地域別最低賃金引上げに係る特例の適用または加点を希望する事業者:要件を確認する書類(指定様式の要件確認書+該当する任意の3か月分の賃金台帳の写し)
  • 事業場内最低賃金引上げに係る加点を希望する事業者:要件を確認する書類(指定様式の要件確認書+2025年7月および応募申請直近月の対象従業員・全従業員の賃金台帳の写し)

特例や加点を狙う場合は、賃金台帳をさかのぼって整理しておく準備が必要になります。


7. その他の細かな変更

実質的な制度変更ではありませんが、第4回では以下のような修正も行われています。

  • RESASの案内が追加:地域経済分析システム(RESAS)を市場分析・地域分析に活用できる旨の案内が、事業計画作成のパートに加わりました。
  • リース取引に関する補足:リース会社からの発注・支払先の選定について、相見積の取得を条件に一定の関係事業者への支払いを可とする旨の記載が追加されました。
  • 誤字の修正:第3回にあった「不部が発覚する」という箇所が、第4回では「不備が発覚する」に修正されています。
  • 目次のページ番号など、書類の追加に伴うレイアウトの更新。

まとめ|第4回の申請準備で押さえるべきポイント

第3回から第4回への変更点を、重要度の高い順に整理すると次のとおりです。

  1. 賃上げ要件が「一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%」に一本化。第3回の「給与支給総額2.5%」ルートは廃止され、実質的に基準が引き上げられた。
  2. 「地域別最低賃金引上げ特例」が新設。要件を満たせば補助率が1/2から2/3に引き上げられる。
  3. 上記に対応する加点項目(⑩・⑪)と添付書類が追加。賃金台帳の整理が必要。
  4. 公募スケジュールの更新(応募締切:令和8年6月19日18:00)。

特に1点目と2点目は、補助金額・採択可能性に直結します。第3回向けに作成済みの事業計画を流用する場合でも、賃上げ計画の数値と、自社が最低賃金引き上げ特例の対象になり得るかどうかは、必ず第4回要領で確認することをおすすめします。

※本記事は公募要領第3回・第4回を比較して作成したものです。申請にあたっては、必ず事務局が公表する最新の公募要領および関連様式の原本をご確認ください。

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